【感想】Blair Witch(ブレア・ウィッチ 日本語版)
Blair Witch 感想
結論:精神が乱される森。正気を保てるか?!
ウォーキングシュミレータ―が好きな人向け。
※あくまでも個人的感想によるレビューです。
項目 | ストーリー | アクション・ システム |
やりこみ | 自己喪失度 | 個人的好み |
---|---|---|---|---|---|
評点/S~D | B | B | B | A | A |
【クリアまでのプレイ時間】 6~7時間ほど
【お気に入り度の目安(~100%)】
◆80~99%:とてもオススメで大好きな作品 ◆60~79%:高い満足度が得られる作品
◆50~59%:普通に楽しめて面白い作品 ◆20~49%:少し残念な点が多々ある作品
◆1~19%:イマイチで私には合わなかった作品
【評点の目安】
S:秀、A:優、B:良、C:可、D:残念
+:多少の加点
<↓詳しい感想は下記で↓>
ストーリー
原作映画「Blair Witch」の世界観や一部の設定を引き継ぎ、ゲームオリジナルのストーリーが展開。未解決に終わった原作の事件からの2年後が描かれている。
舞台は、米メリーランド州バーキッツビルのブラック・ヒルズの森。
主人公は警官のエリス。
行方不明の少年を探すために愛犬バレットと共に、奇妙な森へと足を踏み入れた。
映画で森の中に“いる”とされている魔女伝説も健在のようだ。映画では魔女を撮影しに行くのが目的だったが、本作は行方不明の少年を捜しにいくというものに置き換わっているのも面白い。
ゲーム面も含め、ループ世界ゆえの分かりづらさや、ヒントの気づきにくさで賛否が分かれそうである。一般的な「面白い!」には入らないと思うが、考察が必要とされるストーリーと狂気ものが好きな人は楽しめそう。マニアックな作品だったように思う。
アクション・システム
シューティングなどの銃撃戦や、ホラーアクションでもない。
ホラーテイストの『ウォーキングシュミレータ―』である事をしっかり知った上で、遊んだ方がいい作品だと思う。いわゆる「戦闘が存在しない探索ゲーム」である。ただ歩いているだけの時間が多いということもあり、雰囲気ゲーとしても楽しめるかもしれない。
ホラーやミステリーというよりは「サイコホラー」寄りになっている。
全体的にマニアックな分類に位置する作品で、この世界観に没入できた人しか楽しめないと思われる。作り込みや演出表現は素晴らしいが、誰もが楽しめる作品ではないのが残念。
エリスの持ち物である財布。
妻の写真とバッジ、免許証。お守りにしている占いの紙切れ、どこにでもいそうな普通の警官のようでもあるが、彼はトラウマを抱えている。
エリスは捜索隊のメンバーから外された警官であり、単独行動でこの森にやってきていのだ。相棒のバレットが心支えであり、バレットが離れると不安からパニック発作が起き、歩くこともままならなくなるほどだ。発作の表現は、プレイヤーの恐怖心をも煽っている。
そんなセラピー犬でもあり、相棒でもあるバレット。
警察犬として訓練を受け、優れた嗅覚スキルを持っている。
匂いによって、目に見えない痕跡を辿り、証拠までプレイヤーを誘導してくれる。指示をした場所によっては感知できないこともあるので、場所を少し変えたりしながら指示して探させるのがコツである。
時には、森の中に潜む不気味な存在も察知し、危険を知らせてくれたりもする。
お利口な犬である。
薄気味悪い森を共に探索し、同じ時間を過ごすうち、プレイヤーはバレットへの愛着が芽生えることだろう。このバディシステムは、とても良いものだった。
そんな可愛い愛犬と深く暗い森を一緒に進む楽しさもあるが、冷めた目でみると犬が単なる物探しツールになっているのが、少し切ない。せっかくの相棒であり、毛色などといった外見もカスタムしているので、他にも何かが欲しかったかも。
なにかが物足らないような、もったいないような気がしてならなかった。
謎解きは、よく考えられていて、犬と共に謎を解くシステムだったり、映画で重要だったカメラを使ったギミックなど、独特な謎の解き方になっている。
謎自体は難しくないが、カメラを使った解き方を理解するまでに時間がかかる人もいるかもしれない。メジャー作品のような親切な作りではないため、ギミック説明が分かりにくいという点も要因かもしれない。
また、同じギミックや状況が多く、先が読めてしまうのは残念だった。
ビデオカメラは森のキャンプ内で拾ったアイテムで、非現実的な力を持っている。
また、森の中の至るところに赤いテープが残されており、映し出される映像は過去か?未来か...?ぜひ、考察して欲しい要素のひとつだ。
テープに映る撮影場所と同じ場所への干渉が可能になる。再生し一時停止することで、映された事象を現在にそっくり再現することができる。
干渉できるシーンで一時停止することで、テープの中のアイテムを現実に登場させたり、カメラに映し出された状態に今を移し替えることができるのだ。このギミックを利用しながら、行き止まりを進んだり、重要証拠を手に入れたりしながら進んでいく。
カメラは暗視機能がついており、他にも使い道がある。物語後半のイベントからは、肉眼では見えない存在が赤く映し出される。恐怖を感じる瞬間はあるが、怖すぎるほどではなかった。
戦闘はなく、気づかれないように移動するのだが、見つからないように動くのは緊張感がある。
突然の謎の敵登場は「恐怖」しかないが、フラッシュライトを当てることで撃退できる。彼らは光に弱いようだ。うまくライトを使って撃退したいが、ライトを照らすことで殺してしまうという事実もある。
逃げるのか、撃退するかはプレイヤー次第だ。
マップ上に散らばっているファイルは、ストーリープロットに結びついているため、読み込むことで物語を深掘りでき、考察することで深みが増してくる。つまり、ファイルを読まないのであれば、このゲームの面白さは半減するとも言っていいだろう。
そのため、取り逃しなどがあると作品を深く楽しめないという点がある。
ファイル等は、取り逃すほど隠されてはいないので大丈夫だと思うが、暗闇の中進むことが多いため、意識していないと見逃すこともあるだろう。
Bloober Team特有のバイノーラル・オーディオは素晴らしい。音響を気にしない人にとっては、特にどうでもいいような事かもしれないが、この作品自体が音響にこだわって作られていると思う。
音に立体感があるためヘッドホン推奨となっているが、ヘッドホンをしなくても十分に音響を楽しめた。しっかり音を感じたいのならば、ヘッドホンをオススメしたい。
トランシーバーや携帯などは、コントローラーのスピーカーから聞こえてくるようになっている。(ヘッドホンの時は未確認なため不明)
ヘッドホンをつけていれば、頭の中で音が立体的に聞こえるため没入感がある。
巧みな環境音のタイミングによって、空間を演出している。木々の間を歩く時の音、カサカサ音、動物の鳴き声など、音響効果に優れている。
トランシーバーや携帯電話などのユーザーインターフェイスから発展するストーリー。
主に、トランシーバーは先行する捜索隊、携帯電話はエリスの妻との会話劇として用いられている。
妻とのメールや電話でのやり取りは、彼女と今後の関係にも影響し、ゲーム中の態度で変化していくことになる。
夜間の森は暗すぎて、迷子になりやすい。
ライトもあるが、リアルと同じく周辺を照らす光であり、遠くまでは見通すことはできない。場所によってライトの光加減が違うのも、森の深さがよく分かる演出だと思う。
どのシーンも同じ場所をループする。
これは、実際に森で迷子になる感覚とも似ている。簡単に現在地を見失ってしまうのだ。同じところをぐるぐると周ってしまう焦りと不安を感じとれるが、長時間ゲームで味わうと不安感より、ゲームが進行していないような感覚になるため、人によってはイライラしてしまうかもしれない。
また、フィールドの進めない場所へと進んだりすると、引っかかるなどといったバグがいくつかある。暗闇なので仕方がないが、なるべくフィールド外に行かないように気をつけたい。
主人公のモノローグやファイルの文章によって、物語の展開を伝えていくタイプの作品なので、ローカライズがとても重要な作品でもある。
今回『日本語版』として発売するにあたり、しっかりとローカライズされているはずだが、日本語訳が変で内容がわかりにくいところがあった。
例えば、英語ではメールで「look up」と送られてくるのだが、日本語の場合は「調べろ」となっている。「調べる」も間違ってはいないが、このイベントシーンでは、上を見上げないと進まないシーンであることもあり、ここの表現は「見上げろ」がいいと思うのだが。
「調べろ」送られてきたメールを頼りに、周りを調べまくってもイベントが発生しない状況に陥るため、このイベントの状況に合わない日本語訳だったのでは?と思った次第。意図してそう訳したのかもしれないが、英語だとすんなりと分かる物事が、日本語だと混乱してしまうものが意外と多かった。
両方の言語設定で遊んだが、個人的に日本語設定の時にバグが多いように感じた。
OPの導入シーンが無音になったりなど、日本語吹替という新しい音声データを入れ込んだからかもしれないが、日本語で遊ぶ際はバグが多いのは覚悟して欲しい。
また声優陣には申し訳ないが、演技の雰囲気も英語の方が映画を見ているようで抜群だった。英語は開発チームがイメージするものだと思うので、英語ができる人は英語で遊ぶのをオススメしたいかな。
トゥルーEDを見るには2周が必要なため、一度日本語で遊べば内容は頭に入ると思うので、2周目は英語にするのもいいかもしれない。英語字幕もあるので、ある程度は理解可能かと思う。
やりこみ
6~7時間でクリア。
2周目からは、進行内容を覚えてることもあってサクッと遊べると思う。
これといったやり込み要素はないが、トロフィー項目になっているファイル収集などだろうか。トロコンも2周遊べば取れるようになっている。
ボリュームは精神面を扱った内容からして、ちょうど良いボリュームだったと思う。
少ないと感じる方もいるだろうが、これ以上長いと精神的にも疲れてしょうがない上に、値段を考えれば妥当かと思う。
自己喪失度
森の悪さのせいか?魔女の呪いなのか?
暗い森の中で、エリスは自らの記憶の断片をループすることになる。
“迷いの森”という映画の設定は、ゲームでもうまく作用しており『目的への道筋を見い出せない』ものとなっている。うまい具合に目的がすり替えられていて面白かった。
当初の目的意識は薄らぎつつ、恐怖心が悪夢への苛立ちへと変わっていくのだ。
そのプロセスで、彼が抱えるトラウマが次第に明らかになっていく。それが「物語の肝」にもなっていくため、詳しくは書かないが、PTSDを患っているエリスが見ている世界の表現が秀逸である。
素晴らしい精神疾患の表現。
狂気の中に美しさがあるというのが、映像化されているかの如く、精神崩壊の表現は美しささえも感じた。
今、体験したことはなんだったのか?
本当はどうだったのか?現実か?幻か?
巧みに練られたストーリーがEDへと繋がり考察も深まる。
総合
各所に散りばめられた演出が良くできており、物語に引き込まれた。ストーリーも個人的には好きなタイプでよかったし、相棒の犬バレットがとても可愛く癒された。上手く構成されたシナリオだったように思う。
EDを迎えた時『本当はこうだったんじゃないか?』という悲しい考察が浮かんだりと、未だに「こうだった!」と結論つけられずにいる。考察好きな人は楽しめるのではないだろうか。
しかし、残念な点も多い。
一番はバグだろう。PCやXboxの時点でのバグが修正されていないのは残念。PS4版の日本語版を作るにあたって、見直しはされなかったのだろうか?この残念な点を許せるか許せないかでも、楽しさが変わってくるかと思う。
以上、ブレア・ウィッチの感想でした。